法定研修で介護の質を向上:介護施設で実施すべき14の研修③

これまで2回にわたり、介護施設で実施すべき法定研修の具体的な内容を詳しく紹介してきました。このシリーズもいよいよ最終回となります。
今回は、チームケアや感染症対策の進化を支える「多職種連携」、そして利用者の心身の健康を促進するための「リハビリテーション」など、残りの4つの研修を取り上げます。
これらは職員のスキルアップだけでなく、利用者へのサービスの質を高め、施設全体の運営をより円滑にするために欠かせない内容です。
全ての研修をしっかり理解し、年間計画に反映させていきましょう!
医療に関する研修
介護職員は、吸引や経管栄養など一部の医療的ケアを行うことができますが、爪切りや浣腸など判断に迷うケアもあります。医療に関する研修を受けることで、介護職員は実施可能なケアと不可能なケアを理解し、利用者の疾患に対する注意点を学ぶことができます。
具体的な内容
- 医療行為と介護の違い:
介護職が行える範囲の業務を理解し、医療行為との区別を明確にします。 - バイタルサインの測定方法:
血圧、脈拍、体温など、利用者の健康状態を把握する基礎技術を習得します。 - 医療職との連携方法:
看護師や医師への報告・連絡の仕方を学び、適切なタイミングで協力できる体制を構築します。 - 慢性疾患の基礎知識:
糖尿病、高血圧、認知症など、高齢者によく見られる疾患への理解を深めます。
ターミナルケア(終末医療)に関する研修
ターミナルケアは、終末期にある利用者に対し、医療・看護・介護を中心に行うケアで、その人らしい最期を迎えるためのサポートを目的としています。
ターミナルケアを提供するには、利用者本人やご家族の同意が必要であり、通常の介護とは異なる専門的な知識が求められます。この研修では、ターミナルケアの基本的な考え方や実際の事例を通じて、包括的に学ぶことができます。
具体的な内容
- 終末期のケアの理念:
利用者とその家族が安心して過ごせる環境づくりを学びます。 - 身体的ケア:
苦痛を軽減するための介助や姿勢調整、体液管理などの基本的なケアを習得します。 - 精神的ケア:
利用者や家族の感情に寄り添い、適切なコミュニケーションを行う方法を学びます。 - 多職種との協働:
医療職、宗教関係者、ソーシャルワーカーなどと連携してチームで支援するアプローチを習得します。
精神的ケアに関する研修
介護現場では、利用者や家族だけでなく、スタッフ自身も精神的な負担を抱えることが多く、特に最近では、利用者や家族からのカスタマーハラスメントや、認知症の利用者からの暴言に直面することも増えています。
このような状況に適切に対応するために、個人の対応だけでなく、チームや施設全体での対策方法を学び、スタッフの精神的なサポートを提供できるようにします。
具体的な内容
- 利用者の心理的変化の理解:
高齢者が抱える孤独感、不安、抑うつなど、心理的課題を知り、それに応じた支援策を考えます。 - コミュニケーションスキル:
話を「聴く」技術や、共感を示す方法を学びます。 - リラクゼーション技法:
利用者の緊張やストレスを和らげるためのマッサージや音楽療法、アロマセラピーなどを取り入れる方法を学びます。 - 職員自身のメンタルケア:
ケアを行う職員が抱えるストレスやバーンアウトを防ぐための取り組みも行います。
高齢者虐待防止関連法を含む虐待防止に関する研修
認知症対応型共同生活介護に従事する職員に義務付けられたこの研修では、高齢者虐待防止に関する法的知識や、虐待防止の基本的な方法を学びます。
虐待の原因は様々で、事例ごとに異なるため、共通の対策を講じることが難しいです。そのため、介護施設で虐待が発生する原因や虐待の種類について学び、その対策を事例を通して知ることで、実際の現場で実践できるようにします。
具体的な内容
- 虐待の定義と種類:
身体的虐待、心理的虐待、経済的搾取、ネグレクト(放置)など、虐待の具体例を学びます。 - 虐待の兆候を見極める方法:
利用者の態度や行動から、虐待が疑われるケースを早期に発見するポイントを学びます。 - 通報・対応手順:
虐待を発見した際の報告義務や、地域包括支援センターとの連携方法を理解します。 - 職員間の意識改革:
職場の人間関係や職員教育を通じて、虐待のリスクを減らすための環境づくりを目指します。
まとめ

これらの研修は、介護職員が利用者により良いサービスを提供し、職場全体の環境改善や利用者のQOL(生活の質)の向上に貢献するための重要な取り組みです。施設ごとに内容を柔軟にカスタマイズしながら、継続的な実施を心がけましょう。
以上、介護施設における法定研修14項目について3回に分けて、それぞれの目的や具体的な内容を詳しくご紹介しました。これらの研修は、利用者へのサービスの質を高めるだけでなく、介護職員自身のスキルアップや職場環境の改善にも直結します。また、法定研修の実施は、介護施設が法令を遵守し、社会的な信頼を得るためにも欠かせない取り組みです。
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